蒸気噴出孔の利用 エタノールを利用して省電力化
蒸気噴出孔から水を得るとき、一般的に蒸気タービンと液体クーラーを用いることが多いと思います。この記事は蒸気タービン・液体クーラーに加え、エタノールを利用することで省電力化を行う構成の紹介です。
Blazing Falken氏が公式フォーラムに投稿した"CryingCrab"(泣いているカニ)というシステムの応用です。(ネーミングセンスが抜群ですねぇ・・・)
参考:公式フォーラム
<構築例>
動作説明
①間欠泉の蒸気が液体のエタノールを暖め、エタノールは80℃前後で気体に昇華。蒸気は逆に冷却されて水へ凝固
②気体となったエタノールの上部を液体クーラーからの水で冷やしてエタノールを気体から液体へ凝固
③①②を絶えず繰り返す
③液体クーラーでの冷却時に排出する熱は蒸気タービンにて熱破壊
<押さえておきたいツボ>
●エタノールの相変化
エタノールは液体と気体では比熱容量が異なります(比熱容量とは単位質量の物質を単位温度上げるのに必要な熱量のこと)。
基本的には固体であろうが液体であろうが気体であろうが質量が同じ場合、同じ熱を加えると同じ温度変化をしますが、エタノールの場合はこれが異なるわけです。
状態 | 比熱容量 | 沸点/凝結点 |
液体 | 2.460 | 78.35 |
気体 | 2.148 | 78.35 |
参考:https://oni-db.com/details/ethanolgas
気体の方が比熱容量が低いですね。(つまり1℃温度変化させる熱量が少ない)
この違いでどのようなことが起こるかというと、同じ質量の液体のエタノールと気体のエタノールの両方に特定の熱量を加えた場合、気体のエタノールの方が温度上昇が大きくなります。これと同様に特定の熱量を奪う場合も気体のエタノールの方が温度低下が大きくなります。
エタノールの沸点/凝固点の付近の温度帯では「液体を過熱して気体にする熱量よりも気体から液体へ凝固させる熱量の方が小さい」という現象が発生することになります。子の熱量の差分だけ熱破壊できていることになります。
これを利用すると「直接蒸気を冷却して水にするよりもエタノールを触媒として間接的に冷やす方が少ない熱量で済む」ことになるので省電力となるわけです。
液体⇔気体の相変化が常時行われている状態が効率が良い(全部液化していたり、全部気体に昇華していたりすると熱破壊は起きない)ので温度ムラを発生させるためにある程度スペースがあるのが望ましいです。狭いとエタノールが全て気化する、もしくはなかなか気化しません。ちなみにエタノールの量はポンプ1回分程度(200kg)でOK。
加えて、熱交換をスムーズに行うために金属タイルや輻射パイプ、熱交換プレートは熱伝導率の高いアルミニウムなどが望ましいです。
●蒸気噴出孔の根元にあるループさせている配管
エタノールで冷却された蒸気は凝固して水になります。右側からポタポタと下の貯水所へ行くわけですが、エタノールで冷却されてできたばかりの水は80℃付近です。110℃の蒸気を水へ凝固させるには十分な温度ですね。というわけで蒸気の冷却の補助に利用しています。プールを作るといずれは蒸発する温度まで上がってしまい一気に大量に気化してしまうおそれがあります。そうなった場合エタノールが一気に過熱されてしまい、うまく液体と気体のループを発生できなくなってしまうためプールは作らずにちょっと熱交換したらそのまま落下させています。90℃超えるくらいにはなります。
生成した熱水を特定の温度まで冷やす場合にはなくても問題ありません。電解装置や油井に利用する場合は水の温度は高くても問題はないため、80℃の水は蒸気を冷やすための冷却源となるわけです。
●液体クーラーの冷媒と設定温度
冷媒は水で問題ありません。超冷却水がある場合にはそちらがいいですね。設定温度は水の場合は60℃前後で液体クーラーをONにすると良さそうです。高すぎると冷却が間に合わず、エタノールがなかなか液体になってくれません。低すぎると余計な冷却になってしまい液体のエタノールが気体になりずらいです。先ほども書きましたが液体⇔気体の相変化が常時行われている状態が効率が良いので、噴出量に合わせて温度の設定が必要です。
メリット
・ちょっと凝っているので気分的な満足度が高い
・省電力
デメリット
・スペースが必要
・周囲に他の気体を混ぜないように真空化が必要で構築が少し手間
・蒸気間欠泉の噴出量が多い場合には冷却が間に合わず圧力超過が起こってしまい最大限の水が得られない場合がある(熱交換に使う素材次第で変わるが限界もある)
冷水を得たい場合は空いたスペースにもう1台液体クーラーを設置すればOK。
熱水を得る手段としては有効ですが冷水を得る手段としては全体の消費電力から見ると省電力分はそこまで大きくないです(小声)。